不安定=高い反応性を理解したとき
化学にまつわる概念で特に印象に残っていること。
「不安定=高い反応性」が結びついたとき、非常に感動したことを覚えている。
最初に理解したのは高校2年生のときだったとは思う。あまり覚えてはいない。
当時の私は化学物質に対し、「良い」「悪い」の二元論でしか考えていなかった。不安定な物質は悪い物質、高反応性な物質はいい物質、と勝手に思っていた。しかし化学Iの授業で様々な概念を学んでいるうちに、どうやらその二つの性質はほぼ同じことを指しているっぽいぞ、と理解した。つまり同じ物質でも見方によって良いとも悪いともいえるのである。
現在研究室で研究をやっていて、さらに新たに染み付いた概念は、「高い反応性=危険=扱いにくい」ということである。
例えば反応試薬の検討を行う場合、目的の反応性が進行するギリギリの低さの反応性を試薬を選ぶ作業は非常に面白い。できるだけ安定で扱いやすい試薬を選択したいのだが、目的の反応が進行しなければ意味が無いので、どの試薬が最適か考える必要がある。
反応基質に関しても、適切な安定性-反応性の物質が最も望ましい。安定な基質は適当に保存していても大丈夫であるが、その分反応しにくいので次の反応の際に加熱などの過激な条件が必要だったりする。反対に室温で分解してしまうような不安定な物質は、基本的に扱いづらいので好まれないのだが、それは様々な反応が容易に進行することの裏返しでもあるため、場合によってはそのような基質が望まれることもあるのである。
さらに具体例を挙げると、還元剤・リチオ化剤・塩基などを選択する場合が一番分かりやすいかな。
化学系の学部生が習う最も有名な2つの還元剤は、NaBH4とLiAlH4(LAH, ラー)である。どちらもヒドリド(H-)を放出することで、カルボニル化合物をアルコールへ還元することが出来る、非常にポピュラーな試薬である。
これらの還元剤の反応性は、NaBH4 < LiAlH4である。NaBH4はアルデヒド・ケトンしか還元できないが、LiAlH4はそれらに加えてエステル・カルボン酸も還元可能である。
では何でもかんでもLiAlH4で還元したいかと言うとそんなことはない。LiAlH4は非常に危険な試薬だからである。
NaBH4は適当に扱っても問題ない試薬で、学生実験でも使用されるが、LiAlH4は静電気などの微弱な刺激により容易に発火するため、非常に危険で取り扱いに注意が必要な試薬である。当研究室ではここ3年で4回LiAlH4を発火させている。そのうち1回は私である。そのため、NaBH4で問題が無いのであればできるだけそちらで済ませたい。
このような感覚は実際にその試薬を扱ってみないと身につかない。私が学部生の時、「どうして2種類も還元剤を覚える必要があるのか。1つでいいじゃないか、面倒くさいなぁ」と思っていたが、紙の上だけでは分からない沢山の事情があることを、実際に実験を行うようになって理解した。紙の上で分かりやすい反応と、実際に反応を行う上でやりやすい反応は全く異なるのである。
リチオ化剤(n-BuLi<t-BuLi)や塩基(例えばK2CO3<NaOH<LDA)などにもそのようなことが言える。さらに単純な反応性だけではない、基質特異性や試薬の値段などのファクターを加味して、適切な試薬を選択する必要がある。
一応言っておくと、これらの試薬の選択は非常に難しいのではないかと思うのかもしれないが、そんなことはない。100年以上続く有機化学の歴史によってポピュラーに体系化されており、いわば無数のマニュアルが有機化学界に転がっている状態であるため、そのマニュアルに従うという印象が強い。ある反応を行いたいときのファーストチョイスは、研究室の経験則的な言語化出来ないものも含め、大抵はある程度確立されている。
例えば脱メチル化反応のファーストチョイスはBBr3だと思う。それでだめなら5種類くらいメジャーな試薬はあるので、それらを試してみて反応がうまくいく条件を探すし、鈴木宮浦反応や薗頭反応等のPd系カップリング反応で使用するPd源のファーストチョイスはPd(PPh3)4だと自分は思っているし、それでだめならさらに好反応性のものを順番に試していく。参考にできる論文は沢山転がっているので、それらを参考にする。
これらの「知見」を参考に、適切な条件を選択する作業は私は結構好きである。有機化学の面白いところのひとつだと思う。
以上、思いついたことをだらだらと書いた。
こうやって言語化すると、成績が底辺だったとはいえ一応大学で知識付けたんだな、私、と思えますね。
本日は以上。
研究を通じて身に付けたスキル
私の研究テーマは、偶然にも比較的自由度の高いテーマになっていて、全体を通した目標はただ一つ、「何でもいいからいい感じのロタキサン合成法を開発する」だけである。
私の研究テーマは、一般的な金属触媒カップリング反応開発研究と同じだと解釈すると分かりやすいと思う。わっか分子がリガンド、軸分子が基質である。
「いい感じの」の方向性はいくつかあると思っていて、
・条件の新規性(より低温・短時間)
・基質の新規性(軸構造の新規性、すなわち新しい反応を利用する。ロタキサン合成に利用する反応自体は既知でよくて、まだロタキサン合成に利用されていない反応をチョイスする。)
・金属の新規性(安価だったらなおよいが、単に新しいだけでもいい。)
・リガンドの新規性(これは既存のリガンドでは達成できないものが達成できる、というストーリーは必要である。)
これらの新規性のうちのどれか、もしくは複数を満たすプロジェクトを計画する必要がある。
先生からアイディアとして頂いたものや、自分で思いついたアイディアはいくつかストックしているので、その中からまずどれをやるのかチョイスし、具体的にどのような段階を目標にするかを定め、具体的に何をするべきかを考えてまとめて(その間に文献調査なども必要で(キライだけど))、そして実行する。大抵途中で壁にぶつかるから適宜修正する。
そして最近は諦めるタイミングが分かってきた。当初の期待から逸れた結果が出た時に、もう少し条件を変えて検討してみるか、芽が出なさそうだから諦める(一旦放置するということにする)か、私が選択する必要があることに最近身をもって感じている。
ちょうど先週2つくらい研究に行き詰まった。一つはまだまだ取れるプランBが沢山思いつくのでまだ粘り強くやりますが、もう一つの方は根幹の仮定が期待とずれていたということが分かったので、頓挫させることを決めた。
常に「次は何をするか、これがうまくいかなかったら何をするか。この失敗を受けたプランBをやるのか、はたまた諦めて新しいことをするか、新しいことをするならストックのうちどれか」みたいなことを考えながら研究を行う。
就活するにあたってこんなことを考える必要があるのですよ。面倒くさいですね。
お前ら全員私のことをばかにしているんだろ
雑記的なポエムです。
お前ら全員私のことをばかにしているんだろ。
毎月お馴染みの発作の時期がやってきた。
あまりにも周期性が高すぎてPMSを疑っている。
しかしプラセボかもしれないと思っている。
私の聖書「メンヘラの精神構造」(加藤諦三、PHP新書)によると、この「馬鹿にされる」という観点がとてもメンヘラ的である。
その本に記してあるメンヘラの特徴の一つに、「いつも他人から馬鹿にされないように気を張っている」がある。まさにその通りである。
逆に言えば一般的な人間は世界を、馬鹿にする/されるの世界観で生きていなくて、他人から馬鹿にされることを別に恐れていないのだろう。私もそうならなくてはならない。
私のもつ世界への解釈だと、他人に馬鹿にされない簡単な方法は、他人よりも成果を出すか、他人よりも努力することだ。
つまり夜なべして研究しているときは他人から馬鹿にされないので快楽なのである。
だから私は夜なべして実験をしたがるのである。
でも寒いから最近は泊まりたくない。
普段はさすがに鳴りを潜めているのだけれど、発作が起きているときは、自分よりも優秀な人間が世の中に存在していることが許せない。私が世界中の人間から愛されていないことが許せない。私よりも優秀な人間が全員いなくなれば私が世界で一番優秀なのに。中二病の受験生みたいな文章ばかり出てくる。
これは本当に発作に近くて、この思考回路が終了すると、「生還した…!」と感じる。萩尾望都著「残酷な神が支配する」の終盤にも似たような描写があった。彼らはクリスマスからの数日を発作のさなかに過ごし、年が明けたらようやく生還したのである。
早く生還したい。
メンヘラは言い換えれば、自己中心的である。興味のほとんどが自己なのである。
早く自分なんかどうでもいいから他者に興味を持つ思考回路にしなくてはならない。出世できない。いや、どうせ出世しないからいっか。
私は残念ながらとても女性的な性格をしているようなので、何かに対して心配していなければ気が済まない。しんどい。
出世する以外で金を稼げるようになるビジョンを知らないけれど、出世できる気がしないからしんどい。
窓際社員でも家族を養えるようになる方法を誰か教えてくれ。
仕事以外の生きがいをそろそろ見つけておくべきではという予感が去年あたりからしている。仕事は裏切る。仕事を生きがいにできる人生は一握りの幸福な人間だけだと思っている。一握りの出世の期待を持たれている人間だけなのではないかと言う予感がしている。仕事は多分私を裏切る。昭和のモーレツ社員(仕事を通じた承認を求めているメンヘラ社員)は現代の社会には求められていないのだ。
一番安直なものは子育てなのだけれど、私は現在DINKsを希望しているので、もうちょっと手軽に似たような効果が得られるものはないだろうか。
私の打たれ弱さに我ながら辟易する。
人生のモチベーションの大半が承認欲求なので冷静に考えれば頭おかしい選択をしてしまうのが人生破滅しそうで怖い。
私はどうせ社会人なんかやっていけないよ。どこかに入社してもどうせ半年で辞めるよ。だって父がそう言ってた。キャリアカウンセラーもそう言ってた。
メンヘラの特徴の一つに「被害者意識」がある。自分で自分の人生の責任が取れない。自分が加害者であるというセルフイメージに耐えられない。というより、被害者でない状況にもう耐えられない。そしたら何をよりどころにして生きていったらいいのか分からない。
昨日一日中会議だったんだよね、しかも私はやる気が無いから疲れないやつ。ずっと内職してスライドの修正をしていた。そしたら全然疲れていなくて全然眠れなくてこんな早朝にぐだぐだ文章を打っている。
デスクワークって体力的には疲れないんだな。普段実験室に入るけど立って作業する機会は少なくて基本椅子には座っているから、そんなに体力は消耗しないだろうと思っていたが、歩き回ったり重いものを持ち運んだりする作業はそれなりに体力を使うんだな、普段からいい運動になっていたんだな、と分かる。
いや違うかも。受け身のスケジュールでよかったからかも。今日何するか私が決めなくてもよかったから。どうだろ、分からない。
ショートスリーパーに常に憧れているが全然叶わない。正直研究室に入ってから健康的な生活を送れているのは、毎日7-8時間寝ているからである。高校時代生活が壊滅的だったのは6時間睡眠を目指したからである。もっと短時間睡眠でよければもっと沢山h仕事ができるのに。
悔しくて情けなくて恥ずかしくて悲しい
2021/01/22
本日は大分情緒不安定な日でした。
事情を説明するのは面倒くさいから気が向いたらする。
私がきちんとプレゼンを練ってこなかったのが悪いし、私の説明力がなかったのが悪いし、少しせっつかれてすぐ「見切り発車でした」と主張を引っ込めた私が悪い。
そもそもこの実験は無駄な実験だったのだろうか?
何を目的とした実験だったのだろうか?
自分のなかでは筋の通ったような目的があると思っていたけど、いざ人に説明しようと思うとうまくできない。
いつもの、リハーサルを、時間ないからいっか、で飛ばして、それこそ見切り発車で進んだのが悪かったかなぁ。
先生は間違っているの?先生が正しくて私が間違っているとした方が私の心の安寧的に楽。怒りはしんどいのよ。悲しみはしんどくない。
悔しさを怒りに変えられたらいいんでしょうけど、まだそんな段階じゃないんだよなぁ。
先生そんなことですーーぐ泣くようなプライド高くて軟弱な娘だと思われるのがムカつく。これは怒りになる。
私は結局、この実験の是非について腹落ちしていない。
ちょうど月曜日実験する気ないけど何しよっかなと思っていたから、このへんについてぐるぐる考えます。
分からない。私は先生に認められること、褒められることが研究の大いなるモチベーションだから、それが期待した通りに得られなくてパニックになっているだけなのかもしれない。
どーーしても今週末に間に合わせたくてめっちゃ実験詰め込んで頑張ったんだけどな。結局お蔵入りか。いや次回載せるかもだけど。
本当は今日も泊まって実験する予定だったけどもういいやと思って停止して帰ってきちゃった。
合成と反応開発―研究の分類について
研究室に入る前の3年生の私に情報を与えるとしたらどうするかなー、と考えながら語っていく。
私も狭い範囲のことしか知らないから、その道の人に言わせれば頓珍漢なことを言ってしまうかもしれない。そこは念頭において宜しくお願いします。ポンコツな修士学生の今の解釈です。特に私の専門からは遠い研究分野に対する知識は全然足りていないと思います。
合成と反応開発―研究目的による分類
有機化学と言っても広いので、様々な研究があります。色々な分類法がありますが、その一つを紹介します。研究とはどんなものかということをざっくりイメージすることが出来れば嬉しいです。
有機化学の研究分野はざっくり「合成」と「反応開発」の2つに分けることが出来ます。研究目的・研究手法による分類といえると思います。
合成/反応開発をお堅い言葉で言い直せば、「合成有機化学」と「反応有機化学」になります。これらの言葉は各研究室で扱っているジャンルなどに書いてあるかと思います。どちらともいえない・どちらにもまたがっている研究領域などもあるのですが、まあ解説していきます。
ちなみに私の研究テーマはどちらかと言えば合成研究です。私は反応開発より合成の方が好きです。
1. 合成
合成研究は、ある化合物を「合成」することが目標の研究です。そのままですね。
その中でも「合成ターゲットがはっきりしている研究」と、「ターゲットのデザインから必要な研究」にざっくり分けられるイメージです。この分類は私の解釈なので適切かは分かりません。
1-1. 合成ターゲットがはっきりしている研究
「合成ターゲットがはっきりしている研究」の最も分かりやすい例は、天然物合成研究でしょうか。薬に使われる化合物や、植物に含まれる化合物の人工的な合成などですね。目的物の有用性が高いものなどは複数のルートでの合成が報告され、ステップ数や収率を競っているようです。例えばフグ毒のテトロドトキシンの全合成研究例はwikipediaに載っているだけでも4研究室での報告があります。天然物合成研究は私の所属する研究室では全く扱っていないので詳しくないのですが、有機化学界の1大ジャンルだと思います。我々も有機化学のお勉強のためだけに定期的に全合成研究の論文を読みます。学部時代にも天然物合成スキームを参考に有機化学反応を勉強する授業がありました。したがって学部生には比較的イメージしやすい研究ジャンルなのではないでしょうか。なので私も3年生の頃は全合成研究をやりたいと思っていました。
この分野に関して、「どうせ実用化には使えないこんな合成ルートを作って何の意味があるのだ」「収率を数%向上させるためだけにどうしてこんな苦労をしなければならないのだ」「開発した新規反応を使った全合成をやってみたいからと言ってこんなものを作らせやがって」と言った根本的な嘆きをインターネット上で目にした記憶はあります。まあこの手の嘆きはどのジャンルでもありますからね。各々でやりがいを見つけるしかありませんね。
合成研究でよくある研究上の壁として、「この反応が進行しないから条件を沢山振る」「反応の選択性が悪い」「結局うまくいかないから合成ルートを根本的に変更する」と言ったことがあるあるですね。網羅的で幅広い有機化学反応の知識と、合成スキームをチョイスするセンスが醍醐味な研究分野ではないでしょうか。
私のB4の時の研究は、このような「出来さえすればいい」有機合成研究でしたね。ターゲットの化合物は教授から指定されて、1から合成スキームの検討を行いました。ある反応がちっともうまくいかなくて合成スキームを1から練り直したり、原料合成のために大スケールで合成してみたらちっともうまくいかなかったり、紆余曲折ありつつも結局1年かけて目的物の合成を達成しました。
1-2. ターゲットのデザインから必要な研究
抽象的に言えば、ある特定の特徴を示す化合物を合成したい、と言ったテーマが典型的でだと思います。この特徴を専門用語で「物性」と言います。すなわちある化合物が合成できたとしても、特定の物性を示さなければ意味が無いのです。ですから「目的の物性を示す化合物はどのような構造ならばいいだろうか?」が研究のスタートになります。逆に言えば目的の物性さえ満たせば、具体的な構造は何でもいいわけです。
うーん、分かりやすい例はないかなぁ。「特定の金属のみをキャッチするような化合物をなんでもいいから作りたい」とか、「温度やpHの変化などで任意に構造が変化する化合物をなんでもいいから作りたい」とかをよく見る印象です。いわゆる材料方面の研究に近くなってきますね。物理化学や無機化学、生物化学などの知見が必要な、複合的な領域の研究も多くあります。この手のテーマは、合成技術だけにとどまらず、分析手法や他分野領域などの幅広い知識と技術を得られることが特にやりがいではないでしょうか。
先に述べた天然物合成にも、おそらくこの手の研究はあると思います。「特定の生物に対して薬理活性を持つ化合物をみつける」などが典型でしょうか。
1-3. 私の研究室の話
(書いてから思ったがこの話はめちゃくちゃ守秘義務に違反すると思うので公開してはならないな。)
という訳で全カットです。せっかく書いたのに…悲しい…。どの辺まで公開しても守秘義務違反にならないか、今度暇なときに助教にでも聞こうと思います。
2. 反応開発
合成と双璧をなす有機化学研究の分野である反応開発です。この分野の目的は「新しい化学反応を開発する」になります。学部時代に様々な種類の反応を習ったと思いますが、その中でまだ生み出されていない反応を新たに生み出すということですね。反応開発もやはり有機化学の花形な印象があります。
反応開発の中にもいろいろと分類があると思いますが、私は扱っていないためあまり詳しくありません。パッと思いつくよくある新規性は
- 既存の反応よりも効率がいい(低温・短時間・高収率)
- より安価な試薬を利用する(金属の種類を安価にすることが多い)
- より安全・単純な反応
- その反応によってできる化合物が新しい
- 高選択性(複数の化合物/異性体/立体化学などをよりよく制御している)
などでしょうか。
各研究室で得意とする分野があるので、その分野を拡張した反応、その分野を利用した反応の開発研究を行うこととなります。
私自身は合成の方のテーマ群にいますが、研究室内には反応開発を行っているメンバーもおり、彼らの研究を横目で見ていて感じたことを以下つらつらと書きます。
反応開発の醍醐味は何といっても条件検討ではないでしょうか。いかに短時間で最適条件を見つけるかは各人のセンスが光る場面だと思います。
また、反応開発の人が特に得られる能力として、論文を読む能力が挙げられると思います。最適な条件の検討を行うためには数多くの論文を読む必要があります。周辺分野の様々な論文を参考にして様々な条件を検討するからです。基質、塩基、配位子、溶媒、温度など、様々な条件を最適化します。専門用語でスクリーニング、と言うこともありますね。
合成研究を行う我々も、合成中の反応に躓いたら同様に論文を読んで条件検討を行いますが、反応開発の方はその条件検討が仕事のようなものですからね。読んでいる論文数がケタ違いだと思います。
さらに、開発した新しい反応の反応機構の解明も行う必要があります。そのためにも周辺分野の論文を読み込むことは必須ですし、そのあたりの理解のための基礎知識は必要になります。
また、自分の行っている研究が類似の研究と比較してどの点が優れているか語れる必要がありますから、周辺分野の論文を読み込むことは必須です(これは合成の人々も行う必要がありますが)。
それから行う実験数も格段に多いですね。研究テーマの種類や研究の段階にも拠りますが、収率1つのデータが分かればよいことが多いので、かけようと思えば一日に何実験も同時にかけることが出来ます。1日に25個反応をかけて条件のスクリーニングを行った話や、半年で1500実験行った助教の話などを聞いたことがあります。
終わりに
有機化学研究の2大分野である、合成と反応開発について語りました。私の独断と偏見による解説なので、一応話半分で聞いてください。私が合成研究を行っているので、合成方面のことばかり詳しく書いてしまいました。
合成と反応開発は相互に関係し合う分野です。反応開発で新たに生まれた反応を合成へ応用する、合成研究で得られた知見をもとに新しい反応を開発する、そういった関係です。そのため研究室では合成と反応開発をどちらかを行うという訳ではなく、2つの分野が相互に関係し合って研究が進んでいきます。ただ学生個人レベルでは大抵どちらかを重点的に行いますから、自分はどちらの方がやりがいが感じられそうか、考えてみてもいいかもしれません。
合成/反応開発以外にも、様々な観点で研究分野を特徴づけることが出来ます。
- バイオ(生物化学)・物理化学・無機化学いずれに近い分野なのか
- 成果がすぐに出るか/長期的に成果を生み出すか
- 実用に近いか/基礎的な研究か
などなど。それぞれの観点について、自分はどちらの方がやりたい/どちらでもいい/分からないを考えてみると、研究室選びの指標の一つになるかもしれません。
どれも本質的な目的や、研究室で行う作業に大きな違いはありません。毎日実験を行って、その結果を考察して、次の手を考える。この繰り返しです。
ついでに述べると、研究室選びは研究分野も大事ですが、それと同じくらいかそれ以上に研究室の文化がとても大事です。各々の研究室に特徴があると思いますので、色々見学して判断してみるといいと思います。
私はエクセルで各研究室の各評価項目に〇×をつけて点数を付けていました。しかしそれでも結局最後は直感で研究室を選びました。結果的に正解だったと思います。研究室生活はとても楽しいです。
人によって良い悪いの判断基準は違います。ですから他の人の意見を参考程度に聞くのはいいですが、最終的には自分で決断することが大切だと思います。それが後悔しないことにつながります。ちなみに私が今の研究室を選んだ最終的な決め手は、「変わったヤツが沢山いる」と見学で聞いたからです。
べらべら語りました。
化学専攻の3年生が読んで分かる文章を目標に書いたけれども、専門用語を結構使ったので伝わらない気がしてきた…。いつか気が向いたらもう少し平易に修正します。
また筆が乗りまくって5000字も書いてしまった。所要時間4時間、飯も忘れてぶっ続けで書きました。楽しかったです。こういったブログ記事って、筆が乗ったときに勢いで書き上げないと書けないですからね。集中して書けてよかったです。普段から思っていたけれど話す相手がいないことを、いい機会にアウトプット出来てよかったです。
本日は以上。
この瞬間のために研究をしている
研究が上手くいくかもしれない…!という期待感に満ちた瞬間のために研究をやっている。
朝から興奮が止まらない。何でもできちゃう。
そうだよこの瞬間のために研究をやってきたんだよ。久しぶりだこの感覚。
先日、今年新しく来た助教に研究について相談をしたところ、新しい実験のアイデアを頂いた。
この実験はいい結果だろうが悪い結果だろうが確実にデータにはなって、議論できることは大幅に増えるだろう。特に反応機構の議論など就活で語れそうなことがとても増える。
昨日あたりから細かい実験条件を詰めて、結果の予測を行い、来週実際に実験をかける。
体の奥から湧き出る興奮が止まらない。
この瞬間のために研究をやっている。
「これでうまくいくかもしれない…!」という実験を閃いて、その予定を立てている段階が一番の快感。
助教は「うまくいってから興奮しなよ」と言うが、それでは駄目なのだ。結果が分からないから、可能性が無限大だから興奮するのだ。
成果を期待している段階の方が、成果が本当に出てしまった段階よりも快感は強いのだ。
このような思考回路に心理学的な名前がついていた気がする。この心理的報酬体系の人間は大体が破滅する。だって成果を得るよりも得ない方が心理的報酬が高いんだもの。成果が得られないのよ。
例えばアニメの最終回だけ見ずに放置しておくとか、戸棚におやつをしまっておいて腐らせるとか、大事な試験や面接をすっぽかすとか、それこそ同窓会をすっぽかすとか、
そういうことが往々にして起こってしまうのですよね。よろしくないですね。
研究職としては、このような性格は別に喜ばしくない。低め安定が理想だと思う。このようなタイプは成功するとめちゃくちゃに興奮するが、失敗すると反対にこの世の終わりのように落ち込むのだ。本来は失敗しても大きく動じずに、冷静に次の手を打てる能力が必要なのだ。
こういう興奮しているときは注意力散漫なので、実験をすると大抵器具を割ったり数値を間違えたりして碌な目に合わないことが経験的に分かっている。
こういう時はこのようにべらべらと文章をしたためて興奮を鎮めるのが最適解である。
話は少しずれるが、やはり新しい助教というものはいいですね。新しい知見というものは大事です。
固定のメンバーしかいないと知見が凝り固まりますから、壁にぶつかったときの解決方法が一遍通りになってしまうのですよね。
つまり学会とかがとてもとても大事なのですよね。インプットがそのまま引き出しの広さすなわち知見の広さになるわけですから。
新しい助教の先生、本当にうちの研究室に来てくれてありがとう。正直ハード面でもソフト面でも劣悪な環境の研究室だから、素敵な先生とっては非常に役不足だと思うけれども、内部の私としては本当に来てくれてありがとう。
国立大学は1研究室に5人くらい教授・助教がいるじゃない?やはりそういう研究室の方がいいのかしらね。うちの大学は1研究室1教授、+せいぜい1助教で個々がこじんまりやっているけれど、教授本人としてはこの方が好きにやれるからいいのかしら。視野が狭いから分からないわ。
私は何がしたいの?
新年あたりからずっと病んでいる。
私は何がしたいのだろう?と再び闇の中に放り込まれてしまった。
なぜならば、いざ志望動機を書こうとして全く書けないからである。
私は何がしたいの?
(研究職、研究開発職がいいの?という問いもあるがそこは悩みたくないんだよなぁ)
どうして化学業界がいいの?素材業界がいいの?
化学の人間、有機化学の人間が(人数的に)最も多く求められてそうだから、じゃ駄目なの?
素材の中でも何がやりたいの?機能性高分子なの?なぜ?
1つにどうやら有機化学の知識が生かせそうだから、と、もう1つに利益率が高そうで専門性が高そうで私が身に付けられる技術がハイレベルそう、じゃ駄目なんだろうな、どこの会社も同じだもんな。
私は本当にこの業界に進みたいの?
やはり私みたいな何も考えていないへらへらした人間は就活なんかするべきではないのでは?ニートになるべきなのでは?
しかし母曰く、責任感の無い私が就職に向いていなかったとしても、食いっぱぐれるわけにはいかないので働かなくてはならないらしい。そして働くのに向いていなくても、それは働いてはいけないわけではないらしい。むしろ働かなくてはならないらしい。という訳で就活をしなければならない。
どうして素材業界がいいと思ったんでしょう。エピソードトークをする必要があるらしいですよ。
なんかよく分からないけど性格か夢から語るのがいいらしいですよ。両方語れるといいですね。
先輩のESを見る経験が足りないのでしょうか。だから書けないのでしょうか。私が悪いのでしょうか。そんなことないよと言って欲しい思いがスケスケだが、実際まあ私が悪いのだろうな。
やはり私みたいな意志薄弱で責任感のない学生なぞどの企業も採ってくれないのだ。入ったら3年で辞めそうと判断されるのだ。実際辞めるかもしれないのだ。もう嫌だ。