大学院生の引きこもりが3年かけて卒業を目指す日記

東京の大学院で毎日楽しく実験をしています。うっかり留年が決まったので3年で卒業できるよう頑張ります。専攻は有機化学。構造有機化学、合成有機化学、遷移金属触媒反応、超分子、ロタキサン。お酒と地下アイドルとシュミレーションゲームが好き。twitter:https://twitter.com/ch2cl21?s=09/

私が理学部化学科を卒業して化学メーカーの技術職を目指すまで

私は、高校時代に化学を志し、某大学の理学部化学科に進学し、そのまま大学院に進み、現在修士2年生です。うっかり留年が決まったので来年は修士3年生で、2022年の春に卒業します。卒業後は化学メーカー(素材メーカー)で開発職/研究職に就職したいと思っています。


で、就活をしなければならないのですが、私がこの進路を選んだきっかけとなった出来事について、就活での自信をつけるためにつらつら書いていきたい。

自分史みたいなものである。筆が乗ったので書いていきます。

 

まとめると、

・高校1年の時に社会科見学で理化学研究所に行った
・高校2年の有機合成実験が超楽しかった
・大学でも学生実験が本当に楽しかった
・研究室も研究が超超楽しかった。

といった感じです。

本当、実験が楽しくてここまで来ちゃった感じですね。

 

【幼少期】
優しい両親と仲の良い妹ととてものびのびと育った幼少時代だったと思います。特に嫌な思い出がありません。おおらかな小学校で、自由に過ごさせてもらいました。

 

中学は余りいい記憶が無いので飛ばします。勉強は楽しかったです。中2から行かせてもらった塾が私にはすごく合っていました。
このころの将来の夢は、裁判官とか作家とか丸の内バリキャリOLとかでしたね。中学の理科の先生は嫌いだったので、このころは理科は嫌いでした。

 

【高校1年生】
・高校1年生の秋に、高校の社会科見学で理化学研究所(的なところ)に行きました。その経験は私の今の進路の原点です。この経験で私は世の中には研究所というものがあるということを知り、私のあのような研究者になりたいと志すきっかけとなりました。
研究員さんが3名ほど自身の研究内容の話をしてくださいました。難しかった記憶しかないですし、具体的なことは何一つ覚えていません。でもあのように白衣を着て我々の前で堂々と発表する女性研究員をみて、私もああなりたいと強く思いました。むしろ他の学生があまりそう思っていないことに驚きました。

・このころは文理を決めていませんでしたが、友人に「あなたは理系でしょ?」と言われ、そうか私は理系なのかとそこで得心を得ました。彼女が何を意図してそのようなことを言ったのか覚えていませんが、受験時代に本当に理系でいいのだろうかと迷った時はその言葉を心の支えにしました。

 

【高校2年生】
・高校2年生の秋に、各業界のOB・OGさんが20人くらい来てくださり任意の講演を聞くイベントがありました。そこで私は大学の研究職の方の話をお聞きしました。東大の生命科学の女性研究者さんでした。今思えばおそらくポスドクではないかと思います。お名前は憶えていません。新種のバクテリアか何かを発見してyahooニュースに載ったと言っていました。本当に楽しそうに研究をしていらっしゃることが伝わりました。「私は夜型なので昼過ぎに来て夜中に帰る」とおっしゃっていました(今思えばそれはやめた方がいいと思うが…)。私はその講演で「途中で研究職を諦める人はどうしているのか」という質問をしました。大学教授になれる人なんて狭き門だろうくらいの知識は私にもありました。その質問は彼女には想定内だったらしく、専用のスライドで解説してくれました。もちろん途中で研究職でない道を志す人もいて、普通に民間企業に就職する人も多いし、また民間企業で研究職・技術職となる人も多くいるとお答えくださいました。理系の職種と言えば大学教授くらいしか知らなかった私にとって、それ以外にも様々な仕事があるのだなと知るきっかけでした。

 

・また、高校2年の夏休みにとある大学の理学部化学科を見学しました。具体的にどういうことを思ったか全く覚えていませんが、研究室にすごそうな機械が沢山あったような気がします。大学に本当に理学部と言うものがあるのだとそこで実感しました。理学部化学科を出て博士を取って理研に就職するのがこのころの将来の夢となりました。

 

・高校2年生の化学の授業もとても楽しかったです。高校生のくせにめちゃくちゃ学生実験をやらされて、毎回大学と類似のレベルの実験レポートを書かされました。年間で25個のレポートを書きました。特に3学期の有機化学の期間は2か月で8つも実験を行って、週に2回も実験を行う週もあってレポートを書くのが本当に大変でした。
・で、私はその実験レポートを書く作業が本当に楽しくて楽しくて。普段何気なく用いてるこの化学用語の定義は何なのだろうと教科書や辞書を読み込んで意味をうんうんと考えるのも楽しかったですし、実験した現象がどのような原理で起こっているのか、これまた文献を漁り私の頭の中で論理をこねくり回すのが本当に楽しかったです。(私は楽しかったからいいですが、化学にあまり興味ない文系の学生も同じレポートが課されていて、こなすのが大変そうでした。)当時のレポートは未だに取ってあって、支離滅裂で独りよがりな文章を書いているのですが、とにかく書いてて楽しかったのだろうなというのが伝わります。また採点してくれた化学の先生が毎回お褒めのコメントをくださいまして(もちろんリップサービスだったのでしょうが)、それが私は本当に励みになって毎回楽しくレポートを書きました。大学でも実験レポートを書く生活がしたくて、化学科を志しました。

有機化学を志すきっかけとなったのが、高校2年の3学期に行った有機合成実験です。アルコールからアルデヒドを合成し、カルボン酸になり、最後にけん化して石鹸を作るところまでの実験をしました。CとHとOしかないのにこんなにも自由自在に構造と物性を変化させることが出来るのか、と私はとても感動しました。私も将来このような新しい物質を作りたいと思いました。


・大学受験はもう少し勉強すればよかったなという後悔はあります。この後悔のない学生などいるのでしょうか。特に数学や物理はせっかく浪人までしたのだからもう少し基礎から叩き直せばよかったなと思います。


【大学時代】
・大学は浮き沈みの激しい生活で大変でしたが、それでも学生実験は本当に楽しかったです。
・高校時代に実験レポートの書き方には慣れていたのもあって、1年生の初回の実験レポートでとてもいい点数を頂いたんですね。初回に満点の10点を取ったのは学年で私だけだったと言われました。あれは嬉しかったです。首席の学生が、最初のテストでいい点を取っちゃったからやる気が出て頑張って首席となるように、私はそれからも張り切って実験レポートを書きました。
・原理の理解のための文献漁りと、結果の考察が楽しかったです。


・文献漁りについて、実験に出てきた知らない単語や概念について、その分類を調べて、原理・利用法・注意点等、私の興味の赴くままに気が済むまで調べました。例えば高吸水性ポリマーの実験の回は、ポリマーとは、重合とは、重合の種類、今回のはラジカル重合だからラジカルとは、ラジカル重合の利点とは、ラジカル重合を用いるポリマーは他に何があるのか、etc…、自分なりに調べてまとめました。友人たちは生憎そんなにレポートにやる気を出していないようだったので、一人で毎日図書館にこもって文献を漁りました。

・知りたい用語の解説が載っている文献が全然見つからなくて、それっぽいタイトルを10冊くらい漁ってようやく見つけたこともありました。実験データを文献値とどうしても比較したくて、書庫の奥底にあった英語の分厚い本を漁って、どうにか見つけたこともありました。

・難しい用語について文献3つ分くらい意味を調べて、私なりに咀嚼して、自分の言葉でどうにか書く作業が、大変だったけれどやりがいがあり、楽しかったです。文献のコピペなら楽なのですけど、ちゃんと文献を読んで、「これはつまり何が言いたいのだ…?」とうんうん考えて、自分の中で意味を理解したときの快楽は最高でした。

・高校時代からの私の主義なのですが、「学生実験レポートは自分のために書くべき」だと思うのですね。特に原理の欄はそうだと思っています。別に何か新しいことをやっているわけではないし、おそらく原理の欄で聞くことは採点する院生には周知の事実のはずで、学生のお勉強のために課しているのだろうから、どのように書くのが採点者にとっての正解なのだろうなどと考えずに、私が一番理解しやすい書き方をするのがいいと考えていました。


・考察も大変でしたが楽しかったです。得られたデータに対して、予想値はこうである、なぜならこのような原理でこうなるはずだから。しかし実測値はこうなってしまった。その原因はこれこれが考えられる、といったことを各データについて行うのが楽しかったです。特に滴定などの分析化学実験はデータ量が多くデータ解析のための数値いじりも多かったので、大変だったけれどやりがいがありました。「このデータについてどうやって語ったらいいか皆目分からない…」と思っていても、2,3日うんうん考えていたらいいアイデアがうかぶものでした。授業そっちのけで実験の考察にいそしみました。

・この考察の部分は大学院での研究に通じる部分でした。学生実験で「どーして文献値とこんなにずれてしまったのだ…?」と考えることと、現在研究で「どーして実験成功してくれないんだ…?」と考えることはとても似ています。


・実験は1週間に1回だったので、次の実験の予習もしながら前の実験のレポートを書くルーチンがいいリズムとなって、他の教科の勉強も頑張れたと思います。レポート地獄が終わる11月末あたりから勉強のやる気がすっぱりなくなりましたもん(笑)おかげでテスト前はちっとも勉強しなくて……
・ 2年生までのレポートのうち9割で満点を取ったのは私の学部時代の唯一の自慢です。TAの裁量にも寄りますが、うちの大学ではレポートの平均点は8点で、特に優れた数人しか10点はもらえない印象があります(個人的にはこの基準はもう少し緩くていいと思う)。それでこの点数を取れたのは、全力を出した甲斐がありました。手の抜き方が分からなかったとも言います。

・ただ、あんなにレポートを頑張っても学生実験の2単位分しか成績には反映されないのだから、もう少し座学も勉強頑張っとけよ、とCとDの羅列の成績表を見ながら思います。

 

・いつからか、将来の夢は博士を取って理研に行くことから、修士で化学メーカーに就職して研究員になることになりましたね。少なくとも3年生の時にはそう思っていました。あまり博士進学率の高い大学でないからでしょうか。私よりもよっぽど優秀な学生を沢山見たからでしょうか。私の成績が入学時の予想よりも低かったので、私に博士は資格が無いと思ったのでしょうか。
・いや、優秀な人はむしろ修士で就職するのであり博士は修羅の道だと知ったからでしょうか。ただうちは私大なので、国立大や東大東工大だとまた雰囲気が違いますかね……。この認識は半径5メートルでの認識なので、実態は違うかもしれません。


【研究室時代】
・大学4年生から今まで、有機化学系の研究室に所属し、毎日楽しく実験を行っています。正直成績が悪くて研究室に所属できるかギリギリだったのですが、今の教授にお情けで入れてもらいました。本当に感謝しています。

・研究室に入ってからの実験は学部時代から大きく違いますね。
・まず行う実験数がケタ違いです。平均1日1実験、多い日はもっとやります。実験以外にやらなくてはいけない作業も膨大です。そのため考察するべき箇所はしっかりと考察し、調べるべき場所はしっかりと調べますが、学部時代のようにじっくり腰を据えて原理から調べて実験を行うということはなくなりました。
・学部時代と質は変わりましたが、私は研究室に所属してからの実験の方が格段に楽しいです。自分で裁量高く実験計画を立て、それをこなしていく作業、未知のことに挑戦しているので実験は大概が失敗で、その原因をうんうんと考える作業、その失敗を解決するための方法をまたうんうんと考え、解決しそうな別のアプローチを試す作業。その繰り返しが本当にやりがいがあります。
・また、研究室は一人ではないので、それも本当に心の支えになります。学部時代は、(私に友達がいなかったからなのですが)実験レポートは一人で書いており、孤独でした。でも研究室には同じように実験を行っているメンバーがいて、ポカを報告して笑われたり、分からないところを相談したり、一緒に問題解決のアイデアを考えてもらったりできて、とてもありがたいです。
・楽しい楽しい実験にかまけて座学はサボっていたので、そこは反省点であります。4年生の時にもうちょっとしっかり有機化学勉強しておけばよかったなぁ。あそこが最後のチャンスだったよなぁ。
・それとは別に、最近はむしろ最新の論文のインプットの方をやるべきだよなぁという思いがあります。M2になってようやくある程度論文を理解する理解力が付いてきました。最近有機合成化学協会誌くらいはちゃんと読もうかしら、と思っています。日本語だし。時間作らないと読めないんだよなぁ。いつ作ればいいのだろう。
・私の研究テーマはいわゆる掘り起こしたテーマで、5年前くらいに頓挫していたテーマをもう一度やってみようかというようなテーマでした。まだ大した成果は出していなくて、いや、まだまだ可能性は無限大だと思っているので研究しているのですが、とにかく私のテーマは分かりやすい前任者の先輩がいる訳ではないことに対して私はすごくコンプレックスでした。「先生は私に期待していないから時間つぶしとしてこんなしょうもないテーマを与えたのだわ!」と拗ねたこともありました。しかしどこかの企業の会社説明会で誰かの先輩社員が、「大抵新しい発見というのは、20年前とかに一旦寝かしといたテーマを再発掘して出てくるものである」とおっしゃっていて、それから私はすごく自信がついて、自分のテーマに誇りを持てるようになりました。私のテーマはきっと可能性に満ちているし、きっと何か新しい発見をもたらしてくれると信じています。
・私は私のテーマを愛しています。私が作った化合物は彼女か娘のように思っています。なかなか思う通りに動いてくれなくて憤りと悲しみの連続ですが、それでも愛しい彼女です。


【就活について】
・去年のM1の時の就活にて、コロナ渦ですぐに病んで就活と研究を全て投げ出したので留年が決まってしまいました。と言うわけでもう一度就活をします。本当、去年もう少し頑張っておけばよかったです。責任感の無い学生でした。
・志望動機が書けなくて困ってしまいますね。どうやら産業界は低分子有機化合物よりも高分子有機化合物の方が需要があるようなので、高分子の分野の製品を扱った方が選択肢が広そうだ、と理解しました。高機能プラスチック、エレクトロニクス材料、樹脂製品なんかを扱えたらいいですね。もちろん低分子有機化合物、つまり医薬品や農薬などのファインケミカル製品も扱ってみたいです。どの製品も面白そうで困ってしまいますね。日本の化学メーカーはどこも独自の高い技術を保有しており、ニッチで高シェアな高機能製品を数多く出していますからね、どこも魅力的に映って困ってしまいますね。どこかの企業に内定がもらえるといいなぁ。
・私は賢くはないですし、コミュニケーション能力もあるほうではないですし、英語力も全然ないですが、これまで真面目に、愚直にひたすら研究をやってきた自負はあります。私の持てる能力の最大で研究に打ち込んできた自信があります。頂いたテーマを愛して、責任をもって育てられる自信があります。そのような人材を求めている企業がありましたら、ぜひとも、貴社の持っている独自の技術を私にも学ばせていただき、そして私も貴社の技術の発展に貢献して、世界No1の製品を生み出したいです。是非とも宜しくお願い致します。

 

 

 

以上、ペラペラ語ってきました。筆が乗って6000字も書いてしまった。

実験楽しいです。就活はしんどいけど。明日も実験頑張りまーす♥️