オープンキャンパスで聞かれることその2
その1のリンク:
はじめに
こないだオープンキャンパスで高校生の質問に答えたのですよね。その時に語りたくなったので記録。なんだか筆が走ったイタイ文章ですが、まあそのまま載せよう。
化学のそれぞれの分野の違いは何か
入試課の、高校化学すら分からないお姉さんに聞かれたので。親戚に説明するつもりで書く。
有機化学
- 分かりやすいイメージ:薬、糖など
定義で言えば、C, H, Oで出来た分子を中心とした化学です。高校化学で言えば、アルカン、アルコール、カルボン酸、ベンゼン、などあの辺。
産業界で言えば、製薬、農薬、食品などがイメージしやすいでしょうか。それらの「合成」とそのための「反応」の学問です。
ぶっちゃけ化学の学問の中で就職に強いのは、「高分子化学」か「有機化学」だと思いますよ!!産業界はほぼそれらを扱っているので!!!さらに比較すれば高分子かな!!!
私の専門は有機化学なので、以下の他の分野はパンフレットとにらめっこしながら書きました。大きくずれては無いはず。高校生はこのパンフレットを読んでもここまで読み解けないでしょ。
物理化学
- キーワード:溶液・界面の化学(化粧品など)、光化学(分光とか、レーザーを分子に当てるとか、発光する分子とか、光を与えることで起こる化学反応とか。ぶっちゃけ流行り)、機械化学(メカノクロミクス、分子に圧力などの力を加えた場合の化学)、熱力学、分子軌道論、反応速度、などなど
化学物質の物理的性質を読み解く学問です、おそらく。門外漢の私がイメージする物理化学は、こんな感じです。
皆さん大好きな化粧品の化学は、界面の化学が大半を占めています。化粧品業界に行きたい学生はこれらの分野の研究室を選ぶ学生が多いです(当大学の私の知っている中ではO研究室とかY研究室とか)
無機化学
- 分かりやすいイメージ:電池、電気、金属、イオン、分析、など
定義からも分かるように、無機化学は「その他」です。
産業界と結びつきが深い分野としては、電池・電気系と、金属系と、分析系ではないかな。リチウムイオン二次電池は様々な化学メーカーが手を出しているので、電池の化学を学んだ学生は需要があると思います。分析系も、どの企業も分析部門はあるもので、化学の縁の下の力持ちな学問なので、一定の需要があります。
ちなみに我々理学部一部化学科では、無機化学の中でも「錯体」という分野の研究室がほとんどです。分かりやすく言うと、「金属+有機物」の組み合わせの化合物の学問です。高校化学で「錯イオン」というものを学んだのを覚えているでしょうか?あれの仲間です。詳しく話すと難しいのでこれ以上は説明しません。無骨で最先端で面白い学問ですよ。
生化学
これは名前からイメージしやすいかな、生物に関する化学を扱っています。ぶっちゃけ生化学は他の化学とは別学問と言っていいくらい、生物寄りの知識が必要です。私は生化学の研究を聞いても割と何を言っているのか分かりません。なのであまり説明はしません。
以上が教科書的分野による区分。
以下に高分子化学と化学工学も説明しておきます。横割りの区分と言えるかな。産業界的な区分。
高分子化学
- キーワード:化粧品、ポリマー、樹脂、ゴム、溶液、界面、重合、物理化学、有機化学、などなど
高分子化学はその名の通り、高分子(分子量の大きな分子)にまつわる化学全般です。上の分野で言えば、物理化学、有機化学を中心に広い知識が必要です。低分子の有機化学は一般に分子量100-大きくても3000前後ですが、高分子は基本的に分子量が1万を超えます。とにかく大きいのがワクワクする人はいいんじゃないでしょうか。
高校化学だと高分子はあまり扱いませんが、66-ナイロンとかε-カプロラクタムとかを学びますね。あの辺の化合物です。
産業界の化学メーカーはほとんどが樹脂やゴムなどの高分子製品を売って稼いでいます。それこそナイロンとかの繊維メーカー上がりのメーカーも多いです。したがって高分子を学んでいた学生は就活に強いですよ…!非常に人気な学問です。
特にみんな大好き化粧品も高分子なので、その辺のメーカーに行きたいのならば、高分子分野を学んどけば外れないんじゃない?と思います。
正直に言うとうちの化学科は高分子化学はあまり強くないので、高分子化学をやりたいならば、応用化学科の方がいいと思うし、詳しくないけど野田や葛飾の学科の方がいいのかな?
化学工学
あまり耳なじみのない分野だと思います。
工学部工業化学科では、上記の学問に加えて、化学工学を勉強します。(これは、工業化学科では上記の化学をやらないことを意味しません。それらもきっちり学びます。)
私自身は学んでないので詳しくないのですが、化学製品の工業化にあたって必要な知識やノウハウを学ぶ学問です。高校生にはハーバー・ボッシュ法とかがイメージしやすいかな。
あとは工業化を意識した環境に優しい研究なども手をかけている印象です。CO2の利用とか、再生エネルギーとか。詳しくないけど。
化学系の中で受験学科を迷っている…どうしたらいいの?
これねー。内部の人も答えに困るのよねー。あくまで私の解釈を言いますね。
まず、学部レベルで得られる知識はほぼ違いがありません。
そして、研究室配属や大学院進学の際に他の大学に移ることは比較的普通なので、急いで専門を絞る必要はありません。
化学はそれぞれの分野間が割合シームレスですし、基礎研究と応用研究の間もシームレスです。割と自由に研究分野は変更できます。複数分野にまたがる境界領域の研究領域も増えています。
よって化学系の中での学科選びにそれほど神経質になる必要はありません。
(余談ですが、基礎物理と応用物理は大きく異なる分野のようですね。基礎物理学会と応用物理学会の、それぞれ別の学会を持っています。物理学科と応用物理学科は扱う内容が結構違うらしいので、そこは詳しく話を聞いた方がいいです。)
したがって、受験学科の選び方について、教科書的な回答をするのならば、以下になるかなーと思っています。
まず、もし化学の中で興味のある分野があるのならば、そのような分野を研究している研究室が多い学科を選ぶといいと思います。
特に行きたい分野が定まっていなかったら(それは至極普通です。私もそうでした。)、大学のパンフレットの研究室のページを読んだりとか、あと各研究室は必ずHPがあるので、検索してそHPを読んでみるとか(Rsearchのページに、研究内容を分かりやすく説明してくれています。)、それらで興味をそそられた学科に行けばいいのではないでしょうか。
また、学科選びとはずれますが、追加で月並みな意見を述べておくと、高校生が持つ化学への興味なんて偏っているものなんです。まだ学んでいる分野が狭いので当たり前です。おそらく大学で化学の様々な分野を勉強しているうちに、色々と面白いと思う分野が出てくると思います。変に凝り固まらずに、柔軟に色々な分野に興味を持って欲しいです。
例えば今私は超分子という学問を研究していますが、大学3年生になるまで私は存在を知りませんでした。研究室に入るときも、超分子とは何だかよく分からず研究をスタートさせました。しかし研究を始めてみると、今まで合成できていなかった面白い構造の分子が合成できて、今まで見られなかった化学的特性がみられるかもしれないと思うと、非常にロマンあふれる面白い分野だなーと思います。
超分子の分野って、ここ数十年で発展した、化学の中では新しい学問なのですね。2016年にノーベル賞を受賞しました。化学の先端って新しいので、教科書にはまだまだ載っていないのですよ。
化学界には、教科書にまだ載らないような最先端で面白い学問が沢山あります。ぜひとも、化学科に入学してから、色々な分野を知ってほしいです。
私がなぜ化学科にしたかですが、正直に言うと何も考えず一覧の一番上の学科にしました(笑)。ただまあ敢えて言うなら、私は「大学では世の中の役に立たない研究をしたい(どうせ社会に出たら役に立つことをやるから)」という思いが強くて、「学問」を追求したくて、なので理学部化学科に進学したし、超分子合成などという正直何の役にたつかまだ分からない学問の隅っこで研究活動を行っています。
ちょっと熱く語っちゃった。恥ずかしい。
(ついでに言っておくと化学科と応用化学科なら、応用化学科の方が好成績をとりやすいとの噂があります。比較的甘めに採点してくれる教授が多いとか。まああくまで噂レベルですし、成績の取りやすさで学科を選ぶのもねぇ……。参考程度に。)
就職について
化粧品メーカーに就職したいのだがどうすればいいのか
高分子化学、界面化学、あたりを勉強すればいいと思います。その辺に強い学科に行けばいいのではないかな。神楽坂なら応用化学科かな。
大人気業界なので、就活は大分頑張る必要があります。頑張ってね。
製薬メーカーに就職したいのだがどうすればいいのか
製薬メーカーの研究職は、給料はいいですが狭き門です。
まず有機化学の研究室の博士を出ることがほぼ必須です。天然物合成系の研究室だと望ましいです。
たまに有機系の修士卒でも製薬の研究職で採用してくれる製薬メーカーや化学メーカーがあります。
とりあえず有機化学を勉強すればいいと思います。
むしろ大概はどこに就職するの?
高校性はこれが分からないから、イメージしやすい化粧品とか製薬とか言っているのではないかな。
詳しくはその1に書いたのですが、大抵はプラスチックを作る仕事につくとイメージしていいんじゃないかな。自動車やディスプレイの材料を作ったりしている人が多いイメージです。
せっかくなのでもうちょっと語ってしまうと、研究職は大きく「研究」と「開発」の2つに分けることが出来ます。
私もまだ働いていないし、会社によっても違うので一概には言えないのですが、両者では目的と求められる能力が若干異なります。
研究は文字通り研究する職種です。研究所で、新しい発見、新しい製品を生み出すような研究を行うことが仕事です。新しい何かを生み出す力が、一番求められます。
開発は、製品を開発する職種です。研究との一番の違いは「顧客第一」であること、それから納期が厳しい場合が多いことです。顧客の要望に合わせた商品を、納期に間に合うように開発する力が求められます。化学メーカーの顧客は世界にあるので、世界の会社とやり取りができるのも面白い点かもしれません。(それゆえ語学力もあると有利ですよ)
会社では部署異動がありますので、研究を数年やった後開発にいったり、またその逆もあります。目的は異なりますがやっていることは似たようなことですので、両者の違いはそこまで大きくないです。
さらに言うと、化学系の修士を出たからといって、皆研究職につくわけではありません。
(それから学部卒だと理系として扱われません。理系職(技術職、といいます)は理系修士卒がほぼ必須です。学部生はほぼ普通に文系就職をしています。)
研究開発職以外にも、理系の技術職は色々あります。
例えば、「生産技術」という職があります。工場で化学製品を製造するにあたっての技術的課題を解決するお仕事です。新規海外工場の立ち上げなどはスケールが大きくてグローバルでワクワクしますね。工場はどこの会社にもありますから、化学系で生産技術につく人は結構な割合いるのではないかな?ゆえに化学工学系はこのへんの職種への就職が非常に強いです。
それから、「技術営業」という職があります。顧客に対して製品の技術的な説明やサポートをする職種です。作った製品を売る際にも、化学系の知識があると非常に役に立ちます。
あとは「知的財産」を扱う職もあります。要は特許ですね。メーカーで知財職として働いたり、弁理士の資格を取って弁理士事務所で働いたりします。
さらに言うと、最近は修士を出て化学とは関係ない業種・職種に進む学生も増えてきています。具体的にはコンサル・ITなどをよく聞きます。一般企業も、理系修士卒の論理的思考力や研究遂行能力を求めているところが増えたようです。
大学院の研究生活を通じて、「俺研究きらい」と思う学生は沢山います。研究は楽しいですが、それだけにこだわる必要も無いと思います。
2021.09.21 文章を修正
2022.09.10 文章を修正
高校のはなし
学芸大附属高校出身なの、高校生活もちろん楽しかったし、面白くてイイ奴ばっかだったし、沢山面白い経験をさせて頂いたし、誇りでもプライドでもある。レポートが好きなのは附高出身ののプライドである。
それはそれとしてコンプレックスでもある。「学芸大附属高校なの?頭いいんだね」と言われる経験は何回もあった。嫌だった。
まあ関東圏の塾で受験していたら皆知ってるしね。高校から入れる共学高校では全国で最も偏差値が高かった学校ではある。
(だからこそ、「学芸大…ふうん(しらない学校。)」という反応をされるとちょっと嬉しい。塾に行っていなかったという後輩とか、秋田の出身の同期とか)
ただ私は、 塾で「ワンチャン受かるから受けてみなよ」と言われて受けてみたら受かっただけで、自分がそんなに勉強してきた自覚は無かった。
そんなんだから、高校2年の夏あたりから身持ちを崩し始め、引きこもりがちになり、色々と浮き沈み激しい人生を送りつつ、気づいたら26歳にもなってしまった。
今は浮いている時期だが、1年半前はまた引きこもっていたわけで、またそんな生活をする時期が来るのかもしれないとは常に恐怖している。
大学受験(学部時代もね)、もうちょっと勉強しておけばよかったなという後悔はそりゃ何度もしたけれど、勉強をすることが出来なかったことを含めて私の実力ということだろうし、というか東京理科大でさえ私はまともに成績を取ることが出来なかったし、まあちょっと高校受験の時に結果がうまくいきすぎただけで、こんなもんが私にちょうどいいということよ。神からの運命のお導きよ。
結論があるわけではない。思い出話。
研究室には2種類の女の子が必要である。
研究室には2種類の女の子が必要である。
助教の弁。
研究室運営を円滑に行うにおいて、女子は2人欲しい。しかも以下に示す2タイプ欲しい。
- 今の私のような、ちゃきちゃきしていてバリバリ実験をこなして研究を回してくれる人。
- 庇護欲をそそるような、弱そうでかわいい子。(でもちゃんと実験はしてほしい)
事実、女性は飴なのだから、女性も飴として生きたほうが生きやすいことよ。持っているものは利用しましょ、とのこと。
以下これに関する感想とか
めっちゃ分かる
まず、めっちゃ分かるねん。だから研究室は女子を優先的に取るのだなぁ。多少バカだろうが女子を1人は入れたいと言うのだなぁ。なるほどね、野球部に可愛い女子マネは必要なのだなぁ。
だってさぁ、例えば私がB4のときとかさぁ、1個上の女の先輩2人いたけど、どちらも超癒し系で超可愛かったから、先輩がたに「すごいね」「えらいね」って言ってもらうために研究してた面あるもん。「遅くまで残ってて偉いね」「沢山実験してすごいね」って言ってもらって超々嬉しかったもん。超モチベーションだったもん。玲さんとか、私が話しかけるといつも褒めてくれたから、なんだか疲れた日にわざと玲さんに話しかけに行って褒めてもらってたりしてたもん!
私でさえそうなのだから、いわんや男子学生をや、ってことでしょ?そうだよね分かるよ分かるよ分かってしまうよ。
でも私はいわゆる後者のムーヴはやりたくなくて。だって庇護するは馬鹿にするとセットだから。お前らなんかに庇護されねえぞ!お前らなんかに馬鹿にされねえぞ!お前ら馬鹿にすんなよ!お前らより圧倒的実験量で圧倒して尊敬を奪ってやる!!
と思って毎日アホみたいに実験してきた。
でも実際生存戦略として、特に新人の時は、後者の、庇護欲をそそられる女の方が楽。だから実際B4時は少し意識して庇護欲タイプの女として振舞っていたような気がする。めちゃくちゃ遺憾だしめちゃくちゃ悔しかったしストレスだったけども。
でも私は、女だからって採用されたと思われるのは非常に悔しかったし嫌だったし嫌だった。実際そうなのだけれども。ぶっちゃけ私男子学生なら落とされたんじゃないの?必修単位まだ残っていたし。
私は、ずっと、『女史』と呼ばれる存在に憧れていて。奥山真理恵氏のような、化研に何人かいた先輩のような。でも私少なくとも学部1年次はそこまで賢くなかったし、賢くふるまえるような女子力も無かったし、嗚呼私は前者の女にはなれない、と絶望して学部2年の前期引きこもったところある。
私は、女子学生だからって気負いすぎなのだろうか。変に気負って勝手につぶれているのだろうか。
村上先輩にたまに言われたのですよね、お前は間違った理想を掲げて、それに届かないからと悲しんでいる、と。
M2になって、というかM3になってそろそろ年次に伴う実験量と実力で他の学生を殴れるようになってきて、見方によってはそろそろ『女史』と呼ばれてもおかしくないんじゃない?とようやく自分で認められるような実力がついてきた。
それは本当、自己肯定感に一役買っている。
そう、私は庇護欲をそそられる女のポジションにはなりたくない!!でも生存戦略として楽なことは知っているからどうしても必要ならやる!!でも必要とされない組織に出来たら居座りたい!!!
男社会だと、女子ってどうしても異分子だから、目立たないようにぽつんと存在することってなんだか難しいんですよね。
私は後輩指導が好き
私自分で認識していなかったのだけれど、後輩としての私よりも先輩としての私の方が好きらしいのね。今の私はとても好きだもの。私後輩の面倒を見るのは好きだから、4年生のJCEもプログレは半分以上添削した。M3にもなるとようやく、新人のB4なんて明らかに下なんですよね。少なくともあと1年で君たちに抜かされないだけの実力は付けてきた自信はあるよ、と堂々と言えるレベルの差がついているというか。なので全力で指導するし、私が持っているスキルを余すことなく伝授したい。来年いなくなるしね。
JCEは、Wくん、Kくん、Iくん、Hくんの4人を添削した。正直しんどかった。正解が分からん。それでも「私の正解はこれだと思う」を示すことが彼らの為になると思ってやった。彼らも正解が分からないしね。
プログレは、まずIくんの文章があまりにもひどかったので、「こんなの先生に添削させるのが忍びない!」と言って添削を奪い取った。まだましな構成にしてから先生に添削させた。あと想定質問もいっぱい考えてやった。
それからS君のはほぼ私が書いた。本番3日前に他の先輩に添削を頼んでいた文章を横から読んだら、あまりにも載せて欲しい情報が載っていなかったので、「次は私に見せて」と言って私が添削した。ほぼ書き換えるレベルでバックグラウンドを書いた。あと1週間あるならもうちょっとゆっくり色々と考えさせたかったが、あと2日なのでしょうがなく私が書いた。それから本当はもう1回上がってきたものを添削して、もうちょっといい文章にしたかったが、まあ時間切れだったな。ほぼ私が書いちゃったけど良かっただろうか…。いやでも半分直下みたいなテーマだし、私が添削するべきだったよね。
あとK君は素のプログレの出来は良かったので、でも彼の研究自体に私は結構な興味があるので、プログレ前日に呼びつけて、私がプログレを読みながらいろいろな質問をした。彼はきちんと答えてくれた。落ち着いて応えらえていてとてもよい。私は「今した質問のうちどれかを明日するね」と予行演習を終え、実際本番でどれかの質問をした。
B4のプログレは初回なのだから、無駄に恥をかかせるべきではないと思っていて、むしろ自信をつけさせるべきだと思っていて、質問を受けて答えるということのデモンストレーションを行うべきだと私は考えている。本当は全員分この事前質問渡しの会はやりたかったのだが、さすがに7人分は時間が無いよね。
助教先生は見てくれている
で、この間これらの行動を助教先生に感謝されまして。
いやめっちゃ嬉しくて。もう助教先生がみていて分かっているならもう何でもいいや、と思うくらい嬉しかった。
私、上記以外にも、とっても色々と意識して後輩を褒めまくっていたんですね。それがM3女子たる私の仕事だろうと思っていたから。後輩に自信をつけて調子に乗ってもりもりと研究をやってくれるようにするのが私の仕事だと思っていたから。
意識して飴をやりまくっていたのですよ。
元から飴と鞭なら鞭をするのって本当に得意じゃなくて、昔から本当に得意じゃなくて。「まあ鞭は助教とかY氏とか他の人が与えてくれるっしょ!」と思って、もう飴を与えるのに全振りしていた。まあ書類添削は真っ赤にして返したが、それも愛ある添削ですよ。添削の前にとりあえず3文かけて褒めることは意識してやった!
練習実験で新人を4人も指導して、それはとにかく大変で、まず4人に実験を回させることが本当に大変だったのだが、その最中も意識してことあるごとに褒めた。洗いこみの手つきが上手だね、ドラフトをきちんときれいにしてから帰って偉いね。きちんと洗い物していて偉いね。きちんと考えながら実験をやってくれてありがとう、分からないところを分からないと聞いてくれてありがとう、それはとっても助かっているし(こっちも教え漏れが発生してしまうので)、とてもいい能力だよ。とかとか、色々褒めたつもりなんです自分でも。いや、忙しすぎて細かいとこ覚えていないけど!とにかく意識としてそうしようとは思っていて!
だから、私がやりたくてやっていたとはいえ、それらの影の努力を、助教先生がきちんと見てくださっていて、そして感謝していると知ったら、もう天にものぼる嬉しさですよね。
そう、だから、私は後輩にとっての、「きちんと見てくださる先輩」になってあげたくて。
実際研究って孤独なんですよ。やっぱり最終的には自分で切り開かないといけないから。でも、ちゃんと見てる人は見てるから。それを糧に、孤独に頑張るしかないのです。それがモチベーションになると、私は前の助教先生とか今の助教先生で知っているから、私もその系譜の一人になりたいのです。
私なんてまだまだだし、そういう私の理想とする先輩になれているか分からないけれど、それでもそういう先輩を理想にはしたいし、それを目標に毎日淡々と過ごします。
言いたいことべらべら言っただけだが、本日は以上。
これからの半年はつまらない研究をやりたい
私、これから卒業までの半年はつまらない研究をやろうと思うのね。
卒業までにはいつかやるべきだが正直つまらないので後回しにしていた研究がいくつかあるので、それを片手間で片付けつつ本筋を処理すれば、半年過ぎるんじゃないかな。
あんなつまらない仕事は後輩にやらせたくない。全部私がやりたい。
面白そうな研究は後輩にやらせてあげたい。
具体的に何という話は多分情報漏洩になるな。
ブログ上ではひとまず以上。
マニュアル作成が趣味
今(深夜2時半の研究室にてお送りしています)、『文献紹介の注意点』を書いた。文献紹介とは、全合成論文を用いた反応機構の勉強会で、全合成論文のすべての反応の反応機構を説明するゼミである。
注意点は十か条くらいになった。4年生にこのくらいのことは理解してもらってから書いてもらわないと、添削するこっちが大変。
私、最近この手のマニュアルを良く書いているので、やっぱり私はこういう行為が好きなのかもしれない。
一番上だから気兼ねする人がいないのもあるし、
あと今年4年生が7人もいるんですよね。しかもコロナでリモートで会えないことも多い。新人が2-3人なら口頭で伝えちゃった方が早いんだけど、7人もいると文書で書いたほうが早いんだよね。
私は常々、色んなTipsが口頭伝承なのはどうかと思っていて、もう一番上だし、研究室に一番長くいて、一番研究室の文化を理解してるのは私だという自負もあるし、今年でいなくなっちゃうから、私が知っていること余すことなく伝えたいという願望もある。
これからもいろいろと私的マニュアルを作成していこうと思う。
誰か一人くらいウザいと思っているかもしれないなぁ…。と思う瞬間もある。
他人事で言うが、私はM3という一番上の立場なのであり、リーダーシップを取ってこういうことをやっていっても誰も文句を言わないし、むしろやるべきなのである。きっとそうきっとそう。という訳で私はあざとくこういう文書を作っていきたい。
研究に向いている人。
思いついたまま書くから構成がなっていないけどごめんね
一般人のイメージとして、ものすごく頭がキレる人が研究に向いていると思われそうだが(もちろんそのような分野もあるのだろうが)、実際の研究、特に実験科学の研究は、毎日毎日地道な実験の繰り返しであり、それに耐えられることが、頭がキレることよりも大切なのである。
だから、いっそ少しバカな方が、研究には向いていたりするのである。
でも私は、頭がキレる人が研究室であまり成果を出せないことを心苦しく思う。どうすればいいのか分からない。答えが出ない。
私は頭は悪いが根性と勢いはあるバカなので、頭の切れる彼らに勝つためには圧倒的実験量しかないと思い、昼夜実験をしている(では圧倒的実験量かと言われると微妙なところである。進捗に出ない作業を優先させがち)
以下言い訳。
最近碌な進捗を挙げられていないのは、実験の再現が取れておらず、その状態で研究を進むに進められないからである。その分、いつかやろうと思っていた原料の精製をめちゃくちゃ進めている。きちんと作業はしている。だから石を投げないで欲しい。
あと、家事が上手な人は研究に向いているよ。限られた時間をどう組み立てて実験を進めていくかの能力はとても大事だし、あと実験卓をきれいに保つ能力も必要である。
それから言語化能力はとても大切。他の人は自分が何の研究をやっているか分からないので、それをアウトプットしてアピールする力は必要。他人は、助けてと言えば意外と助けてくれるけれども、助けてと言わないと全く助けてくれない。同じラボでも、隣のデスクの人が何をしているかは全然分からない。
あと何よりも体力。とにかく体力。私は素の体力は無いですが根性はあるので、週2日のラボ泊もさらっとこなせてしまう。特に有機化学は、一つのデータを得るために必要な作業と時間が多い傾向があるので、必然的に拘束時間が長くなり、体力が必要になりますね。
というのもね、どうしてこんな記事を書いているかっていうと先日とあるエピソードがありましてね。
ラボのM2に非常に頭の切れる男の子がいるのですよ。その彼は、しかし結構扱いにくい人で、ついでに言うとあんまり手を動かさなくて、あんまり研究が進んでいない。うまくいかない研究をやる意義が見いだせないようである。
あたし自身も、彼はあんまり話しやすい相手ではなく、ともすると私がブチ切れちゃいそうな会話運びをする人で(まあそれは切れてしまう私がいけないのだが)、まあ周りも比較的扱いに苦慮している。
彼がB4のときに、教授先生のテーマを行っていたのだが(テーマ①)、詳しい経緯は忘れたが、教授先生がセミナーで皆の前で彼を叱ったことに彼は怒り心頭で、彼と教授先生は仲違いし、翌年から新しい助教先生のもとに着くことになった逸話の持ち主である。私は当時、このエピソードは、むしろ教授先生が悪いのではないかと思っていたのですね。同様にセミナーで嫌味を言われてブチ切れた生徒は過去にも何人もいたから。でも昨日新たに聞いたエピソードを聞くに、別にそうでもないのかもしれない、と思い始めた。
それで、新しい助教先生は、1年半彼の扱いに苦慮していて。まず助教先生は彼に研究の進め方の希望を聞いたところ、
・まず人前で叱ってほしくない
・研究の進め方にはあまり口を出されたくない
・他忘れたが色々願望
と言われ、「すると俺は何も口出しできないなぁ」と助教先生は思ったそうである。
そして去年の春から新しい研究(テーマ②)を始めたわけだが(この時期は私引きこもっていたため詳しいことは知らない)、その研究があんまりうまくいかずに、結構早めに「もうこのテーマやりたくない」と言われたそうである。(ちなみにそのテーマは、その後助教先生が20実験くらい検討を重ねると成功し、B4に引き継がれて、もう論文化が見えている。)
それで助教先生は、絶対にうまくいく、共同研究の反応開発の反応機構解明のテーマ(テーマ③)を与えた。反応の開発自体は別研究室の学生がやっており、彼が反応機構解明のNMR実験などを行う予定である。この実験は、うまくいってる研究の機構解明の実験であり、手を動かすことは多くなくどちらかというと計算が多めである。
しかしこのNMR測定は、機器の都合上土日に行う必要がある。彼は、それならば平日は休みたいと希望したが、教授先生は一度それを突っぱねた。しかしその後助教先生が交渉し、土日にNMR実験を行うならその分平日は休めるようにしたそうである。助教先生も大変だなぁ。ところが、先生がNMR実験を妨害されたことにそんなに腹を立てたのか、就活が忙しくなってきたことが原因か、彼はNMR測定を進めようとしなかった。(この辺が確か去年の12月頃)
そのため、助教先生は新しいテーマを与えた(テーマ④)。これも先生が昔行っていたテーマで、絶対にうまくいくやつで、平日の空いている時間に可能である。精製は少し手間だが、我々のロタキサン合成と同じようなプロトコルで、ざっとカラムしたのちに、ピーク時間の分かっているGPCをかければいいだけである。操作はプロトコル化されているので、無心で同時進行で大量に行えばよろし。というタイプである。それもどうやら、先生の求めるペースの1/2か1/3くらいのペースらしく、2日で終わらせて欲しい精製に1-2週間かかっている。でも彼は助教先生に厳しく叱らないでと要望しているから厳しく言うことも憚られ、助教先生は非常に困っているらしい。
そして、今年の5月中頃に彼の就活は終了し、今やっているテーマ④と平行して、テーマ③のNMR実験もやってね、と指示したそうだ。しかしデータが上がって来ず、土日に実験を行っている気配が無い。助教先生は彼に進捗を聞くと、「これとこれとこれはやりました」と報告される。でも「じゃあ後でデータ送ってね」といってもデータが来ない。そうこうしているうちに共同研究先はどんどんデータを更新してくる。助教先生は焦っていたが何もできない日々を過ごしていた。
そしてこの間、とうとう共同研究先の先生に怒られたらしく、「遅い。もう待てないから今出ているデータだけでも提出してしまう。」と。それで助教先生はとても落ち込んで機嫌が悪いのですね。
私、共感性が高いから、助教先生の気持ちに感情移入して私まで苦しい気持ちになってしまう。
私は助教先生がその共同研究先の先生のことをとても尊敬していて、「敵わないなぁ」と日々思っていることを知っている。その先生を失望させてしまったショックとか、でもそれはデータ出さない彼が悪いじゃん俺のせいじゃねえしという気持ちとか、でもデータを出させるのも俺の仕事だし、この現状は俺の力不足かな…という気持ちとか、想像してしまう。苦しいね。
という訳で、助教先生はこの間彼に、「今あるデータだけでも出して」と言ったのだが、それから彼は欠勤を続けているそうである。
私、その彼とそれなりに雑談するほうの関係だけど、その辺の研究の現状を全く聞いていなかったのね。まずテーマ③をまだやっていたことも知らなかったし、テーマ③が共同研究ということも知らなかったし、そのデータ提出を迫られていることも全然知らなかった。あとテーマ④の実験の進め方が雑だということも全然知らなかった。彼が、いわゆるかっこつけしいの隠ぺい体質だということも知らなった。すごくショック。
駄目よ現状を自己主張できない学生は。周りの人というのはね、助けてというと結構助けてくれるけれど、助けてと言わないと全く助けてくれないのよ。
という訳で、このような現状を聞いて、どうしたもんかなぁと思っている訳である。助教先生に「あなたはどうしたらいいと思う?」と聞かれたが、もう全然解決策が思い浮かばないよ。
まあそんなことがあったのですよ
とりあえず自習室追い出されるので書き捨て。
メチル基が取れた
原料合成Schemeの改善をしたよという日記。
私の研究テーマは、新規大環状分子を用いた超分子合成で、新しいわっか分子を合成して、なんか面白いことをやろうみたいなテーマなんですね。
それで、B4のときに新しいそのわっか分子の合成スキームを開発したのですが、そのスキームはあんまりエレガントではないのですよ。
というのも、合成の最後から2番目の脱メチル化反応がうまくいかなくて。
これまでの脱メチル化で採用していた試薬だと副反応が起こり(原理上仕方ないとのちに分かった)、他の脱メチル化法を試しても反応が進行しないか壊れてしまう。
そのため、しょうがないので保護基をメチルからMOMに変更して、塩酸だけで簡単に脱保護できるようにしたのですね。
でもそのMOM体の合成もあまりうまくいかなくて。結局、とにかく早く合成を通したかった私は(合成スキームを完成させることを、合成を通す、といいます)(このわっか分子の合成自体がメインではなく、作ったわっか分子で色々するのがメインなので、早く先に進みたかったのです)、MOM体の合成スキームを確実に成功しそうなルートで選択したため、ステップ数が多くてあまりエレガントでなかったのですよ。
それを私はものすごく気にしていて。さらに言えば、年次が上がって合成や研究の知識が付くと、もしかしたらメチル基外れるんじゃね…?と思って、少しずつ暇なときに検討していたのですね。
卒業までにはメチル基を外したかった。こんな面倒くさい検討を後輩にやらせるわけにはいかない。私が方をつける、と思っていた。
まずHBrでの脱保護の検討をしたのですね。BBr3とかAlCl3とかの激しめの脱メチル化剤を使用するとどうやら壊れているっぽかったので、比較的温和な試薬を選択した。反応は遅いながら進行しているようだったので、反応が完結するまで回してみたところ、1週間で反応は完結してメチル基が外れた。M1のいつだかだったと思う。
上記のことを喜び勇んで先生に報告したが、1週間もかかるなら使えないね、と言われて却下された。私としては、余計に3ステップも増えるMOM体を作るくらいなら、放置するだけだし1週間回したいけど…?と思っていたが、まあ先生の言うことに従って大人しくMOM体を作った。MOM体で出来るならそれでいいじゃない、と先生はおっしゃっていた。でももうちょっと検討したかった私は、闇で検討を続けることにした。
続いて、再びBBr3について検討することにした。M2の秋のことである。B4のときもBBr3の検討は行ったが、目的物は得られず、原料を一部回収し、あとはよく分からないcomplex mixtureを得ていた。この結果は原料が壊れていると思っていたのだが、後から考えるに、「モノは水層に行っていたのでは…?」と思いついたのである。(いや、当時から思いつけよという話ではあるが)。あと、MOM経由で作った目的物の色と、B4のときに試したBBr3での反応の反応系の色がそっくりだったため、実はできていたんじゃね…?と思ったのもある。
この基質はピリジン部位とフェノール部位の両方を持つため、有機層に溶かすことが非常に難しい。きちんと中性にすれば溶けると先生はおっしゃったが、どうにもうまくいかなかった。酸性にすればピリジン部位と塩を形成して沈殿し、塩基性および中性にすればフェノールのヒドロキシ基が取れて水に溶けてしまう。
でものちに思ったのですね。それならば一旦塩基性にして水層に移動させて、再び酸性にして沈殿を回収すればいいのでは?と。
という訳でM2になって再びBBr3をかけてみたのですね。50°C, overnightでかけてみたのです。でもその分液があまりうまくいかなくて。詳細はノートを見返さないと覚えていないのですけど、なんだか水層に溶けてくれなかっただか中和が上手くいかなかっただか、とにかく「分液せずに後処理する方法が無いと無理」という結論に達する程度にはうまくいかなかった。教授に隠れて実験をしていたので相談もできなかったしね。
で、なんだかなにがしかして沈殿を採取したのですよ。そしたらドンピシャ目的物の1H NMRスペクトルを得てしまうじゃないですか。これは行けると思って。でも反応は完結していなかったのか原料も回収したので、もう少し過激な条件が必要だと考えた。
そしてなんかいい条件ないかなーとscifinderを漁った結果、ジクロロエタン溶媒で実験すればもっと高温が可能じゃん?と理解し、それから酸性条件で沈殿をそのまま採取する後処理方法も見つけたので、分液しなくても大丈夫じゃん?と理解したのですね。
という訳で、就活も学会もちょうど終わって暇していた一昨日、100°Cの条件で、そのまま沈殿を採取する後処理をやったんです。メチル基が取れたっぽい1H NMRスペクトルを得ましたよ。しかしMOM経由で作ったものとはピークが違くて、私はおそらく塩の違いだと思っていて、MOM経由は塩酸塩だが、今回はBBr3を使用しているし臭化水素酸塩なのでは?と思っている。
やったメチル基取れたよ!と先生に報告したのですが、先生はあんまり興味なさそうで、「どちらでもいいですよ」といった程度の感想しか頂けななった。そのことに私は大変ご立腹である。先生が喜んでくれるかなって思ったから報告したのに、喜んでくれないならいいよ、これまでと同じように闇で実験するだけだもん、修論で勝手に差し替えるので十分だよ。と思っています。
先生に本当にできているか分からない、と言われたので、しょうがないのでもう一回合成してそのままヘキシル化でもして2ステップ収率を出してあげるよ、そうすれば文句ないでしょ。と思っています。
やーマジで適当に書いたから分かりにくいだろうけど、備忘録なのでこのまま上げるね。